それを「成長」って言うんだね。その積み重ねが「財産」なんだね

それを「成長」って言うんだね。その積み重ねが「財産」なんだねoh05-112私が関わってきた、そして今も関わっている出版業界は、一言でいえば“生き地獄”のような世界です。
大手は1割、残りの9割は中小・零細企業。そこでは低賃金、長時間労働が日夜繰り広げられています。加えて、「なぜ、そんなブラックを通り超えて、クレイジーな仕事をしているの?」という周囲からの冷たい目。働いている人も、頭のネジが2、3本ぶっ飛んでないと、とても続けられません

にも関わらず、「クリエイティブな仕事」という魔力を持った言葉に惹きつけられ、この世界のドアを叩く若者は少なくありません。そして、そのほとんどが、現実に打ちのめされて去っていくのです。

現在、私が関わっている出版社でも、そんな若い女性がいます。年齢は20代後半、入社3年目。仕事をこなすスキルがまだまだで、上司や取材先からどやされまくっています。女性には酷な状況ですが、かなりの天然キャラで不思議ちゃんなので、何とかなっています。しかし、言われたことに対するリアクションがとても曖昧なので、自分からトラブルを作っています。その姿が、若い頃の自分にそっくりで泣けてきます。自分の上司や先輩たちも、相当イライラしていただろうなと思ってしまいました。

そんな彼女が、最近、目に見えて成長してきているのを感じました。キッカケはとある出来事です。あるとき彼女は、観光地やオシャレなカフェを紹介する記事を作るため、女性モデルとカメラマンを連れて取材していました。2件の観光地を取材した後、最後の取材先であるカフェに行ってビックリ。なんと、お休みでした。そうです。飲食店を取材するときにありがちな出来事です。彼らはいつも忙しいため、アポの時間を間違えてしまうことがよくあるのです。だから、私たちは念入りに取材日を知らせるメールやFAXを送っておくものですが、彼女はそういった詰めが甘く、この状況を招いてしまったのです。

「どうしよう」。彼女は頭の中が真っ白になってパニックになってしまっていました。この特集の締切は明後日。モデルとカメラマンを手配して、改めて取材し直すことは絶対にできません。今日取材を終えてなければアウトです。そのどうしようもない状況が、逆に彼女を奮い立たせました。近くには以前に取材したカフェがありました。アポはないが、何とか取材を頼もうと考えたのです。しかし、カフェの店主は「急にそんなことを言われてもねぇ」と面倒くさそう。それでも、必死でお願いする彼女。その真剣さに店主も動かされ、取材がOKになりました。

彼女はこの窮地を乗り越えました。そして、「ピンチのときにも頑張れば、なんとかなることを覚えました」と言っていました。私の心も揺さぶられました。自分も、明らかに実力以上の仕事や窮地が何度も立ちはだかり、その度にボロボロになりながらも仕事を覚えてきました。

それを「成長」って言うんだね。その積み重ねが「財産」なんだね。
だから、そのまま自分を信じて続けていれば、いつかものになるよ。

と声をかけてあげたいと思いました。でも、結局は伝えないことにしました。
なぜなら、この女性は結婚して出版社を退職することが決まっているからです。そして、「この業界には二度と関わりたくない」と言っていたからです。せっかく成長してきているのに、もったいないと思いましたが、この業界は“生き地獄”。普通の幸せを見つけた人に、「続けた方がいいよ」とも言えませんでした。

だから、ここに書いているんですね。ボロボロになりながらも仕事をしている、別の誰かに届くことを願って。

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