『万引き老人~「貧困」と「孤独」が支配する絶望老後』(伊東ゆう)

昨日、『グォさんの仮装大賞』という高齢化社会をポジティブに生きる映画について書きました。そこで「高齢化社会もガッツで乗り切ろうぜ!」みたいなことを書いておきながら、今日は絶望のドン底に叩き落すようで誠に恐縮です。別の仕事で必要だったので本書を読みました。こいつぁ、やべぇ本でした。読んでいて鬱になること必至でございます

著者の仕事は「万引きGメン(保安員)」。かつては不良少年によるものが主だった万引きは、今では様変わりし、老人たちの犯行が激増の一途だそうです

「もう、二日も食べてないんだ。悪いけど、これ、食ってもいいか?」(69歳男・元上場会社部長)

かつては普通に勤め、普通に生活していた人ですら、勤め先の倒産、リストラ、離婚、病気など、ふとしたキッカケで誰もが「下流」に陥る可能性がある、そんな時代なのです。自分の親がそうなるかもしれない。自分自身がそうなるかもしれない。では、そうならないようにするためには、どうすればいいのか。そんなことを考えながら読みました。オススメしづらいですが、超高齢社会の現代日本を知るうえでは最適です。

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万引き老人

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『振り込め犯罪結社』(鈴木大介)

「振り込め詐欺」というと、チンピラっぽい少年たちによる犯罪と思いがちですが、本書を読むと、凄まじく統制が取れた組織的な犯罪であることがわかります。

「母さん、俺だよ俺っ!」と電話をする人は、1ヶ月ぐらいの演技研修をするそうな。研修が終わる頃には、自分でも息子になったかのような感覚になり、騙す成功率は飛躍的に向上するそうです。

騙す電話をする人、銀行口座からお金をおろす人は、末端の末端の末端に過ぎず、彼らですら、命令を下している存在はわかっていないとのこと。詐欺事件がなくならないのも納得です。

詐欺のプランニングをしている連中は、経済新聞、警視庁のメルマガ、雑誌などあらゆる情報に目を通しており、皮肉にも普通の人よりも何倍も「勉強」しています。

「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」という諺がありますが、私たちは敵のレベルの高さも知らないし、己のレベルの低さも知らずに生きています。戦いに負ける(詐欺に遭う)のは必至なんですね

警視庁などはこういった本の紹介などもしたら、防止効果テキメンなんでしょうが、警察の落ち度なども書かれているので、紹介しづらいんでしょう。あらためて、自分の身を守るのは自分でしかないと感じました。

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振り込め犯罪結社 200億円詐欺市場に生きる人々

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アジア間の成熟した相互理解に向けて、小さいけれど大きな一歩

kenchu最近の書店では、中国や韓国を敵視した書籍が大繁盛です。

「売れるのでやめられない。政治家スキャンダルなどと違い、国外のニュースを紹介するだけなので訴訟リスクが極めて低いことも記事を増やす要因だ」。30代の週刊誌記者は明かす。(2014年2月11日 朝日新聞)

アジアとの仕事をしている私にとっては看過できないトレンドですが、それでも全否定はしていません
悪いなりに中国・韓国に「注目」しているわけですから。少なくとも「無視」しているわけではない。これらは相互理解の途上にある出来事と考えることもできるからです

私が大学(東洋史専攻)に入学した1994年。そして中国に留学した2000年当時、ほとんどの日本人にとって中国や韓国を含むアジアは空気のような存在、どうでもいい存在でした。好きでも嫌いでもなく、情報がゼロに等しいので嫌いになりようがなかったのです。かろうじて持っている知識を総動員しても「中国=人民服」、「韓国=キムチ」、その程度のイメージだったのではないでしょうか。

その頃の状況を知っている人間からすると、今は隔世の感があるほど、日本でもアジアの情報は増えています。もちろん悪い情報の方が多いですけどね。
でも、これってやはり相互理解をしていく上で避けて通れない道だと思うのです。
道筋をチャート化すると以下。

 1 アジアへの無関心
 2 アジア情報の増加
 3 好意的な人が3割、嫌いな人が7割 ←←←今この当たり
       ↓
 4 アジア人と実際に交流する機会が増える
 5 その上で良い印象を持つ or 悪い印象を持つ = 相互理解の成熟段階

私たちのようにアジアと仕事をしている人を除けば、ほとんどの人は中国人や韓国人と実際に交流した経験はないと思います。本来、この状態で「嫌い」と言うのはナンセンスですよね。
“食わず嫌い”と同じわけですから。

できれば今後は、一般の日本人でも海外の人との関わりを持ち、交流を深めてほしいと思っています。その上で「好き」や「嫌い」を話題にする社会になってほしいです。
でなければ、テレビや週刊誌の意見に左右されてしまうわけです。それって、とても怖いことですよね。

実際に交流してきた人の話は“血が通っている”

gold-chinese最近、『中国人とのビジネスが必ず上手くいく! 中国語 魔法の黄金フレーズ』という本が出版されました。この本の出版プロデューサーと、ある勉強会で知り合うことができたのが本書を知ったキッカケです。

著書の常泉精吾(つねいずみ せいご)さんは、中国留学後に中国進出している日系企業で働きます。そして、多くの中国人スタッフを管理する立場になります。

しかしながら、苦労の連続。中国人スタッフには、日本の会社のルールが通じません。こうした苦労話は枚挙に暇がなく、常泉さんも他の管理者同様に悩み、自律神経失調症まで患ってしまいます。

それでも常泉さんは、あるセミナーで大きなヒントを得ます。そして、
「大事なことは言葉だ! 的確なタイミングで、的確な言葉を言えばいいんだ」と考えます。その考えは的中。それから中国人スタッフたちはイキイキとした顔で働き、業績は右肩上がりで伸びていきました。
このノウハウを他の企業の人にも伝えたところ、同様に業績は伸びました。
まさに「中国語 魔法の黄金フレーズ」です。

 你的工作表现很好嘛!(素晴らしい仕事ぶりだね!)
 我相信你会成功的。(君は絶対うまくいくよ)
 你的笑容很有魅力。(君の笑顔は素敵だね)

以上のようなフレーズが本書にはたくさん詰まっています。たしかに、こんな言葉をかけられたら、人種を問わず誰でも嬉しいですよね。考えてみれば、こうした当たり前の本が無かったこと自体おかしな話です。
アジアを敵視した本だけでなく、こうした本が増えていくことが、成熟した相互理解につながる第一歩ではないかと思います。

本書の中国語はとても平易で、勉強をはじめたばかりの人でも理解できます。それでいて、中国人に与える影響は計り知れないでしょう。とてもオススメです。

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中国人とのビジネスが必ず上手くいく!中国語、魔法の黄金フレーズ

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“バカ者”が変えた黒川温泉

黒川温泉(熊本県南小国町)は、日本を代表する温泉のひとつです。こぢんまりとした旅館が20件ほどしかないこの地に、日本はおろかアジア各国からも観光客が押し寄せます。
名物は「洞窟風呂」を代表とする自然味あふれる露天風呂です。

しかし、ここはかつてはゴーストタウンと呼ばれるほど、さびれた温泉街でした。それを変えたのは、たった一人の男でした。
若い頃は周囲から「奇人変人」「バカ」と呼ばれていた後藤哲也氏(1931年生~、現81歳)です。
よく地域や社会を変えるのは、「若者、よそ者、そしてバカ者」と言われます。後藤氏は、まさにその典型的な人物です。

後藤氏は旅館・新明館の3代目でしたが、父を含めた周囲とことごとく対立していました。「古いやり方では、こんなところに客は来ない」と考える彼と、保守的な地元の人々の間には埋めがたい溝があったのです。
そんな後藤氏は24歳のとき、何を思ったのか、裏山にノミ1本で洞窟を掘り始めます。毎日、毎日、黙々と岩壁を掘り続ける彼の姿は、「変人」そのものでした。当然、周囲は「ついに狂ったか」と思います。

しかし、彼には「魅力的な風呂を作れば、客はかならず来る」という、信念がありました。そして、掘り続けること3年半。ついに間口2m、奥行き30mの洞窟を掘ることに成功します。さらに、裏山からたくさんの雑木を運び入れ、自然味あふれる「洞窟風呂」を完成させます。なんとも幻想的な雰囲気ですが、これすべて後藤氏の手掘りです。ちょっとアンビリバボーですね。

その後の黒川温泉のサクセスストーリーは、周知の通り。上記の本を読めばよくわかります。
後藤氏の熱意は、ついに彼をバカにしていた人たちをも動かします。他の旅館経営者たちも、後藤氏に教えを請い、ノウハウを学びます。そして黒川温泉は息を吹き返すのです。

新しいことを始めようとして周囲に理解者がいないときや、孤独で潰れそうなときに本書はバツグンに効きます。ぜひご一読ください。

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中国最大のECサイト「淘宝网」(タオバオ)

中国最大のECモールとして有名なのが淘宝网(タオバオ)です。
運営しているのは、中国IT最大手の
アリババ・グループ(創業者でCEOはジャック・マー(馬雲))。写真右がジャック・マー氏で、左はソフトバンク社長の孫正義氏。

2003年からスタートした淘宝网は、2010年現在では総商品5億品目、1日あたり平均10億PV、取引高80億円、会員数1億7500万人を超える超巨大マーケットに成長しました。中国でのEC市場の取引総額は約80%のシェアを独占しています。

中国では、クレジットカードによる決済がまだ進んでいないため、オンラインショップは根付かないと言われてきました。しかし、アリババは支付宝(Alipay)という独自のオンライン支払いサービスをつくりあげ、これがうまく中国の社会・経済にマッチしたのです。そこからは破竹の快進撃になりました。

日本でもここ数年、注目が集まりました。なにせ中国進出には資金もかかるし、例のごとくリスクもあります。店舗を破壊されたら、たまったもんじゃありません。そこで、オンラインショップならば手軽に「中国進出」できるというわけです。

入門書でオススメなのはこちら。

中国巨大ECサイト タオバオの正体 (ワニブックスPLUS新書)

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当然ながら問題もある

出店者が爆発的に増えた結果、勝ち組と負け組にハッキリわかれています。負け組は、ほとんど利益を得られずに手数料だけ払い続ける状態になってしまい、結局撤退するユーザーも急増しています。

また、ユーザー環境がコロコロ変わりすぎるのも大問題です。
その代表的なのが、「Yahoo!チャイナモール」と「淘日本(タオジャパン)」の打ち切りです

上の写真からもわかりますが、ジャック・マー氏は孫正義氏と交流があり、2005年に中国ヤフーを買収し、さらに2007年にはソフトバンクの取締役にも就任しています。この流れで2010年にはヤフージャパンとアリババグループが提携し、淘宝网(タオバオ)の商品を「Yahoo!ショッピング」から購入できる「Yahoo!チャイナモール」がオープン。
同様に、中国でも「淘日本(タオジャパン)」がオープン。ここでは日本の「Yahoo!ショッピング」に出品されている商品約1000万点を中国で購入できるようになりました。

ところが、なんとわずか1年後の2012年5月17日をもって、「Yahoo!チャイナモール」と「淘日本(タオジャパン)」は打ち切りになってしまったんです。
孫正義氏はビジネス界の風雲児としてスゴイところもありますが、こういうイッチョカミして飽きたら撤退というのも多すぎますね。ナスダック・ジャパンやメガソーラーもそうでした。振り回された出店者が不憫です。

以上のことから考えるに、淘宝网をやるときは最新の状況をチェックしながら、あまり過度な期待をしないで程程にやっていった方がうまくいくかもしれません。

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資格起業家・横須賀てるひさの本

横須賀てるひさ氏は30代の若手行政書士ですが、今では「資格起業家」として飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍しています。

「資格起業家」は、まさに横須賀氏が独自に考え出した概念で、
資格業の弱みを把握した上で、逆に強みを強調させた起業家モデルといえます。

資格業は、一般的に「強い」と思われがちですが、結局は個人の資質に左右されます。
よく話に出てきますよね。「司法試験に受かったのに、仕事が取れない弁護士」とか。
横須賀氏自身も、行政書士になりたての頃、仕事がまったく取れずに廃業寸前まで行きました。
そこで、悩みに悩んで考えて、ついに得た結論が「資格起業家」というわけです。

横須賀氏によれば、資格業なのに弱い人には共通点があるといいます。
それは「資格依存度が高すぎる人」とのこと。「資格さえ取ればなんとかなる」と思い込んでいる人は、資格依存度が高い人といえます。
こういう人は、資格を取ってからのビジネスモデルなどを一切考えていません。

しかし、資格を持っているからといって、黙っていても仕事がやってくるということはありません。
そこは戦略が必要です。そうした戦略が、横須賀氏の本には満載なのです。

資格が持つ信頼度に戦略が加わったとき、「鬼に金棒」の力を発揮します。まさにオススメのビジネス本です。

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