「中国ジャスミン革命」の状況を知りたければ

チュニジアの「ジャスミン革命」にならった「中国ジャスミン革命」が起こりえるかどうか、世界中が注目しています。

日本の大手紙はこのニュースをほとんど報じていませんが、産経新聞は情報量が多いです。最新の状況をしりたけば、チェックしておくといいでしょう。

さて、なぜ日本のメディアは中国の報道に並々ならぬ配慮をしているのでしょうか。
それは「日中記者交換協定」の存在があるからです。

「日中記者交換協定」に言及する前に、中国の体制が今も「社会主義国家」であることを忘れてはいけません。

かつての「社会主義」で連想されるイメージは何でしょうか?
マルクス、レーニン、スターリン、ソ連、赤の広場、一党独裁、秘密警察、スパイ、東ドイツ、ベルリンの壁、ルーマニア、チャウシェスク、チェコ、プラハの春、北朝鮮、金日成、金正日、マスゲーム、毛沢東、文化大革命、天安門事件、カンボジア、ポル・ポト、東西冷戦・・・
・・・どれも恐怖感がつきまといますね。

つまり「中国に言論の自由がない」というのは、社会主義国としては“普通”といえます。
スターリン政権下のソ連に言論の自由が皆無だったことを考えれば、逆にあれよりは“遥かにマシ”とも考えられます。

ただ、中国でビジネスをする場合は、社会主義国にいるんだという自覚を持って緊張感を維持しなければなりません西側のルールだけで仕事をすればかならず失敗します。この事実を軽視する日本人、日本企業が多いと感じます。

これはメディアの世界でも同様のことがいえます。
社会主義国におけるメディアは共産党の支配下にあり、党の機関紙としてプロパガンダ情報を流すのが役割りです。よって論調も「わが偉大なるスターリン同志は・・・」「わが偉大なる金正日将軍は・・・」となるのです。そして、西側から来るメディアに対しても、さまざまな圧力をかけて情報を統制しようとします。「日中記者交換協定」は、こうした背景の下で結ばれており、今も続いているのです。

「日中記者交換協定」は、日中国交正常化前の1964(昭和39)年に結ばれました。これにより読売新聞・朝日新聞・毎日新聞・産経新聞・日本経済新聞・西日本新聞・共同通信・NHK・TBSの9つのメディアが、北京に記者を常駐できることになりました。

さらに1968(昭和43)年、以下の「政治三原則」を守ることが要求されます。
 1 日本政府は中国を敵視してはならないこと
 2 米国に追随して「二つの中国」をつくる陰謀を弄しないこと
 3 中日両国関係が正常化の方向に発展するのを妨げないこと

今も中国へ配慮した報道がなされているのはこの協定のためで、従わなければ「国外退去」させられる場合もあります。たまに気骨ある欧米メディアが際どい報道をして国外退去処分をくらっています。

さて、日本のメディアの中でも報道姿勢がそれぞれ異なります。もっとも親中国と呼ばれているのが、朝日新聞です。西側メディアのほとんどが国外退去になった文化大革命のときでも、残ることを許されていました。

反対に、反中国・親台湾の論調は産経新聞です。他紙が似たような論調を繰り広げる中で、際立った記事を配信しています。これらを比較しながら読むと、中国情勢がよりわかると思います。

以下は、元産経新聞中国総局(北京支局)長だった古森義久氏の著作です。産経新聞が文革時に国外退去させられてから31年ぶりに復活したときの支局長でした。

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「浅間山荘」が中国系企業に買収されていた

なんと、昭和事件史に名を刻む浅間山荘(長野県軽井沢町)が中国系企業に買収されていたというニュースが出ました。すでに風化しつつある「あさま山荘事件」が、誰も予想しない方向から、予想しない登場人物によって掘り起こされた感じがします。

この事件は1972年2月19日、連合赤軍のメンバー5人が浅間山荘の管理人の妻を人質に10日間にわたって立てこもった事件です。この事件を詳しく知りたい方は、佐々淳行(さっさ・あつゆき)氏(※補足1)の『連合赤軍「あさま山荘」事件』がオススメです。

著者で現在は評論家の佐々淳行氏は、当時は警察官僚で広報担当幕僚長(警視正、警察庁派遣ナンバー2)の地位にあり、あさま山荘事件の指揮官でした。よって、どのように事件に対処していったかがよくわかります。冬場の篭城戦における食糧の確保、マスコミやヤジ馬への対処、犯人への説得、そしてクライマックスのクレーン鉄球を用いた突撃戦など、その場にいたからこそ書ける臨場感です。

この本は、役所広司主演の映画『突入せよ!「あさま山荘」事件』の原作にもなりました。佐々氏役を役所広司が演じています。ちなみに、この事件のときの警察庁長官は後藤田正晴氏(大甥が後藤田正純衆議院議員)。本書にも沈着冷静なボスとして登場します。彼は後に国会議員になり副総理や大臣を歴任します。
また、当時警察庁警備局公安第三課課長補佐として現場にいた人物が、亀井静香氏(現衆議院議員)。本書の中でも、やたらと元気がいいキャラクターで登場します。キャラは今もあまり変わっていませんね。

さて、この事件を起こした犯人たちは、当時20代の学生(中退・卒業者含む)でした。この頃は下火になりつつあったとはいえ、学生運動が激しかった頃です。各地でテロ活動を行い、1971年には悪名高い「山岳ベース事件」を起こし、仲間をリンチで殺害した後、遺体を山に埋めます。草食化してしまった現代の学生と比べると異次元の話といえます。

たしかに事件は風化しつつあります。犯人、被害者、警察官、マスコミ、それらの家族などこの事件にかかわった多くの人は風化を願っているかもしれません。犯人の親の中には責任を感じて自殺した人もいます。犯人たちが在籍していた大学関係者も事件が掘り起こされることを望んではいないでしょう。

しかし、この間(2011年2月5日)、元連合赤軍幹部でリンチ事件の主謀者といわれていた永田洋子死刑囚が65歳で獄中死したことがニュースになりました。そして、今回の中国企業による買収です。なかなか事件を風化させてくれません。

それにしても、事件が起こった当時の中国は、ゴリゴリの共産主義国家で、連合赤軍の一部は思想に共鳴していました。それが約40年後、「市場経済の超大国」(体制はまだ一応、共産主義ですが)となって浅間山荘を買収しにくるなんて、誰が想像していたでしょうか。

これから中国企業による日本の土地・建物の買収はさらに進むと思います。ただ、あからさまに中国アレルギーを起こすのは発展的ではないです。日本もバブル期に、アメリカでロックフェラー・センターを買収して痛い目にあいました。当然、中国もあからさまな買収を続ければ、かならず痛い目にあいます。なので、状況をよく把握して冷静に対処することが大事だと思います。

※補足1
佐々淳行氏は、戦国時代の武将、佐々成政の子孫。織田信長に仕え、前田利家の同僚。ただし、直系は断絶しているため、傍系によって相続された家督の子孫。

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